ポール・セザンヌかくかたりき

図形とアイマスKRとその他

聖夜と禁煙

二十歳の六月。
天気の良い日。
陽を照り返す椿の葉。
心から死にたいという気持。

それが、僕の初めての煙草の記憶だ。

煙草をカッコいいと思ったことは無かった。
煙草でツルむような仲間も持ったことが無かった。
ただ、積もり積もったストレスからの逃げ場が欲しかった。

当時、ジンと煙草が無ければ僕は壊れていただろう。

今では煙草自体好きで吸っているし、やめたいと思ったことはない。
むしろ、煙草をやめるよう言われることは不快ですらある。
「タバコをやめて。あなたのためだから。」
そう言われた時に、僕は恋人と別れた。
彼女が嫌いな煙草のことを、僕のためにと言われたことが嫌だった。
日も浅くて、お互いあまり愛し合っていなかったと思う。
僕にとって煙草は心の拠り所で、簡単に踏み込まれたくない場所だった。

そんな僕が、煙草を辞めようと思った。
切っ掛けはただのC調である。

ココソリというアイドルデュオがクラウドファンディングを実施した。
アイマスKRに出演している二人である。
頑張ってほしいという気持から、僕も参加することにした。

そこで、返礼の一部に「言ってほしいことを言う動画」というものがあった。
言ってほしいことなんて無い。ただ息災であってほしい。
ただ、「言ってほしいことを言え」と言われると真面目に考えてしまう。
そこでブレイクスルー出来ないのが僕の悪いところだと思う。

僕は色々考えた。
そして、「ココソリになら言われても良いと思う事」を考えた。
それが「煙草をやめて」だった。
煙草を辞めたいと思いもしないのにそうなったのは、そういうC調のせいだった。

しばらく経ち、12月20日、その動画が届いた。
可愛かった。ココさんめっちゃ表情で仕事してくれてる。
やっぱり推しに禁煙勧告されるのは嫌じゃなかった。

それで、禁煙を始めた。

3日間が辛かった。それでも耐えた。
4日目、クリスマスイブ。事件はここで起きた。

クリスマスイブなので毎年恒例バーで一人クリスマス。

1時間程度でワインボトル一本とウイスキー一杯を飲み、泥酔。
帰路でローストビーフのブロックを買って帰った。

帰宅して、ローストビーフ(こぶし大)にかぶりつく。
ぶっちゃけ美味しくなかった。味しないし臭み強いし。

酔って自制心を失った僕は、煙草を吸うことを決めた。
何故クリスマスにもなってこんなことを我慢しているのか。
それで、禁煙断念をTwitterで宣言した。

一本だけ、心が壊れそうなときに吸うために残していたのだ。

棚の下段に入っていた。
それを出して、頭を上げた瞬間。

酔いが回って前後不覚になった。っていうか牛肉が胸に来た。

トイレに駆け込んで、その後は記憶が無い。
具合が悪くて朝目が覚めた。

少なくとも明らかなのは煙草を吸えなかったことと、
暖房を入れていなかったら部屋で凍死していたであろうことだ。

そんなわけで、心は一度負けたけど禁煙まだ続いてます。